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患者さまへ

Psoriasis treatment
乾癬治療

乾癬とは

乾癬は皮膚が炎症し、赤く腫れる病気です。決して人にうつることはありません。日本には1000人に4-5人以上の患者さんがいて、年々増えていて、欧米では比較的よくみられる病気です。やや男性に多い傾向がありますが、10歳未満のお子さんでは女性の方が多数です。

乾癬は、遺伝的ななりやすさと環境要因(喫煙・食生活の乱れなど)が複雑に絡み合うことで出てくるのだと言われており、免疫のバランスの変化が関与していることがわかっています。

皮膚が赤くなる場所は手足・膝・肘などのこすれやすい場所や、お顔のTゾーンや頭皮・胸などの皮脂の多い部分・ワキや股などが多いです。頭にできるとフケが増えることもあります。1割の患者さんでは手足の関節が腫れることがあり、このような患者さんでは爪にも変化があることが知られています。関節が腫れてしまう患者さんのうち、さらに半分では朝目が覚めた時に腰や首が痛いことがあります。

乾癬の最大の特徴は、炎症が皮膚に留まらず、全身及ぶことがある点です。近年ではPSD(psoriatic disease)といった考えがあります。乾癬患者さんでは体重が増えやすく、血糖値が高くなりやすく、脂肪肝が多い傾向にあります。また心筋梗塞や高血圧が増え、それだけでなく、精神的な辛さもとても大きいことがわかっています。

でも、乾癬の適切に治療することで、こういった負の連鎖は断ち切ることができることもわかっています。生物学的製剤や分子標的薬の登場もあり、近年では多くの患者さんが皮膚を綺麗な状態に維持することができるようになりました。お困りの方は、是非一度、皮膚科で診察を受けていただけたらと思います。

治療方法について

ステロイド(副腎皮質ホルモン)外用

もっともシンプルで基本となる治療です。多すぎず少なすぎない適量を患部のみにコンスタントに優しく外用することが大切です。良薬も塗り方次第で仇となります。塗り薬の使い方が適切であるようにサポートすることは担当医のつとめです。また、主な副作用に皮膚が薄くなること、血管が浮き上がって見えること、があります。こういった副作用も担当医は常に気を付けてみておりますので、定期的に通院することが大切です。

ビタミンD外用

こちらも基本となる外用薬です。皮膚の角化細胞に働きかけることで治療効果を発揮します。ステロイドと異なり治療効果発現は緩徐なことも多いですが、皮膚が薄くならない点や効果に波が出ない点がこの薬の良いところです。患者さんによっては塗ると刺激感がある場合があります。なお、ステロイドとビタミンDの軟膏を自分っで混ぜることは、効果が落ちるため望ましくないです。技術の進歩により、現在はステロイドとビタミンD外用剤が初めから混ざっている薬剤があります。

エトレチナート(チガソン)

ビタミンA類似物質で、皮膚の表面にみられる角層のめくれを早める作用があり、乾癬の治療にも有効なことがわかっています。塗り薬で十分な治療効果が出ない患者さんの中で、この薬剤の効果があると考えられる患者さんにおすすめすることがあります。日本では、まだ外用で有効なビタミンA軟膏は厚生省の認可を受けておりません。

副作用に関しては、内服前に十分に文書説明をし、その上で内服の同意をいただいております。 唇のかさつき、手足がめくれは、ビタミンAの作用として皮膚で起こる副作用です。中性脂肪が上昇することや肝・胆系に負担がかかりますので、内服中は定期的に血液検査を行います。 さらに注意すべき点は、催奇性です。

妊娠中の女性がエトレチナートを内服したとき、奇形児の生まれる危険性は正常に比べ大きく高まります。また、この薬剤は脂肪中に蓄積され、体内に長く留まることから、たとえこの薬剤中止していても、内服中止後女性で2年間の避妊、男性で6ヶ月間避妊する必要があります。

エトレチナートは効果が強い反面、いろいろな副作用も多くあるため、長期間内服を続けなければならないときは、定期的な診察の下に続ける必要があります。もちろん、自己判断で中止・再開、減量・増量などを行わないことです。

アプレミラスト

免疫細胞に働きかけ、活性化した免疫細胞が出すサイトカインなどの物質を減らすことで、乾癬を改善させる飲み薬です。頭皮や手足に効果が高い特徴があります。副作用には頭痛・嘔気・下痢・体重減少があります。

シクロスポリン(ネオーラル)

当初は臓器移植の際の拒絶反応を抑える薬として発売されました。その後、乾癬に対しても非常によく効くことがわかり、さらに、臓器移植で使用する量よりも少ない量で良いことがわかりました。体重1Kgあたり3mg-5mgの内服と記載がありますが、もっと少量でも効果が得られることがわかっており、まずは1mg/kg程度の少量からスタートします。副作用として、肝障害、腎障害、高血圧などがありますので、定期的に血液検査、尿検査、血圧測定を行います。 薬剤の血液中の濃度が重要ですので、自己判断で中止・再開、減量・増量などをしないように、決められた内服方法を守るようにしてください。

光線療法(当科では、月・水・金の午後、光線療法の専門外来があります)

名古屋市立大学病院は、日本でも世界でももっとも早くから乾癬に対する光線療法を手掛けた病院です。光線療法は紫外線を患部や全身に照射する治療法です。PUVA, UVA1, エキシマライト,エキシマレーザー, ナローバンドU V Bなどがこれにあります。週1-2回の通院による治療と、少し時間が必要になる治療ではありますが、外用と組み合わせるととても効果が高いことがあります。

PUVA(プバ)療法は、ソラレン(オクソラレン)という紫外線に敏感になる薬剤に長波長紫外線(ブロードバンドUVA)照射を組み合わせたものです。 ソラレンをどのように使うかで、外用・内服・入浴(バス)という種類があります。それぞれを行うとき、方法、注意点を詳しくお話しします。 現在よく行われる方法はPUVAバス療法(全身照射)と手足のみのPUVA療法です。

UVA1療法はUVA1という長い波長のUVAを集めて治療に用いる方法です。この治療では紫外線に敏感になる薬剤は不要であり、そのまま光を当てることで治療できます。部分照射器で、手足に用いることが多いです。

エキシマライトは308nmの光による治療法で、エキシマレーザーは光源がレーザーであり効果がより高い場合があります。こちらも薬剤は不要で部分照射器で患部に部分的に紫外線を照射します。

ナロードバンドUVB療法は、エキシマライト同様に薬剤は不要で、全身に中波長紫外線(UVB)の照射を行います。簡便で良い方法ですが、PUVAバス療法に比べると効果がやや劣ります。

副作用として、紫外線ですから強い日焼けをすることがあります。 特に、PUVA(プバ)療法では、ソラレン(オクソラレン)を塗った場所に日光が当たると強い日焼けをしてしまうので、日光を遮る必要があります。 また、長期間光線治療を受けた患者さんでは、シミ、ソバカスのような色素沈着が治療回数に応じて増えてきます。回数が増えれば、皮膚腫瘍(がん)の発生につながる可能性があります。ですので、光線療法でも予防的に照射治療を受けるのは良くなく、うまく外用療法などと組み合わせることが必要と考えられます。

JAK阻害薬

乾癬性関節炎の飲み薬です。乾癬の免疫を活性化させる原因のサイトカインが働く部分を邪魔することで、効果を発揮します。関節リウマチの薬剤を使用しても効果がなかった患者さんの3-4割で関節症状が半分にできる、比較的効果が高い薬剤です。関節炎の薬剤ではありますが、それに付随して皮疹もやや軽快する傾向があります。副作用には、帯状疱疹になると悪くなりやすかったり、血栓ができやすくなったりします。その他生物学的製剤と同様な副作用も報告されています。

生物学的製剤

注射製剤で、自己注射するタイプのものと、数ヶ月ごとに皮下注射するタイプのものがあります。大まかに①TNFα ②IL17(インターロイキン17) ③IL23という免疫物質をターゲットとした3系統の薬剤があります。このグループの薬剤は、これまでに述べた塗り薬や光線治療・内服薬で十分に治療効果を出せない患者さんで検討していくことが多いです。いずれの薬剤も8割以上の皮膚症状改善を目標にできる効果の高い薬剤ですが、費用負担や副作用の観点があります。

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