Research

研究紹介

Research
研究紹介

臨床をより高いレベルから眺め、考えるために研究をする

名古屋市立大学皮膚科には、非常に豊富な症例数、臨床経験があります。

「あの患者さんは簡単に治るのに、どうしてこの患者さんは治りが悪いのだろうか。」 日常臨床経験の中から様々な疑問が生じてくるのは自然なことであり、我々はこの疑問を、既存の教科書や論文の知識だけではなく、研究という方法を用いて、より高い位置から眺め、臨床を考えることを目的として研究に取り組んでいます。

決して研究のための研究に終わるのではなく、論文のために研究するのではなく、研究という考え方を身につけることで、未知で難治な疾患や、新しい治療法に挑むことができる、大きな大きな臨床力を培うことが目標なのです。研究という考え方を身につけた後、臨床の世界が今までと全く違うものに映る、そういう体験ができるのは、臨床と研究を別のものと考えない、「自然科学のホント」を見つけにいく姿勢が当研究室にはあるからです。

遺伝子・細胞からマウス・ヒトの研究に必要な最新機器は、皮膚科研究室にほぼすべってあります。2名の専任テクニカルアシスタントが、機器のメンテナンスもしています。明日から、最新の研究を始めることができます。よくある「エビデンス」という言葉で臨床の中での疑問を解決できるようにも思うかもしれませんが、自分の力で、新たなことを見つけたり、解決したりすることは、非常に楽しいことでもあり、良い思い出にもなります。ここでの研究から、エビデンスを作ることも出来るのです。

毎年1-2名程度が、大学院に入学して、研究も頑張ってやっています。

光線治療の機序解析と照射プロトコール作成チーム

名古屋市立大学皮膚科では、長年にわたり紫外線に関する研究が精力的に行われており、その結果、数多くの新しい発見が世界に向けて発信されています。当研究室では、光線(特に紫外線)が皮膚免疫に与える影響についての研究に重点を置いており、表皮細胞やTリンパ球を中心に、そのメカニズムを解明するための研究を進めています。

紫外線が皮膚に及ぼす影響は、皮膚疾患の治療や予防において非常に重要であり、当研究室では、光線療法の皮膚に対する有効性を科学的に検証しています。また、既存の光線療法に加え、新たな光線療法の開発にも取り組んでおり、これにより、より効果的で安全な治療法の確立を目指しています。

さらに、患者一人ひとりに最適な治療を提供するために、至適照射プロトコールの作成にも力を入れています。このプロトコールの開発により、光線療法の効果を最大限に引き出すとともに、副作用を最小限に抑えることが可能となります。当研究室の研究成果は、皮膚科学の発展に大きく寄与し、今後もより一層の研究の深化と新たな発見を通じて、皮膚疾患治療の未来を切り開いていくことを目指しています。

マルチオミックス解析チーム

当チームでは、皮膚病変から採取したわずかな量の血液を用いて、局所の免疫状態を解析することに成功しており、これにより皮膚疾患のメカニズムをより深く理解するための貴重なデータを得ています。さらに、シングルセルレベルでのRNAシークエンス解析や空間的解析(Phenocycler)といった、最先端の技術を駆使し、細胞単位での詳細な免疫応答の動態を明らかにすることに挑戦しています。

私たちのチームは、これまでの研究で未解明な部分が多い難治性皮膚疾患に焦点を当て、ヒト免疫学(ヒューマンイムノロジー)の観点からその解明を目指しています。特に、乾癬や皮膚T細胞性リンパ腫など、複雑な病態を持つ疾患に対しては、マルチオミックス解析を用いた包括的な研究を行い、疾患の根本原因に迫るとともに、新規治療法の開発に向けたアプローチを模索しています。

このように、当チームの研究は、単なる疾患の解明にとどまらず、より効果的で安全な治療法の確立を目指しており、患者一人ひとりに適した個別化医療の実現に貢献することを目的としています。今後も、難治性皮膚疾患の研究を深化させ、新たな治療の可能性を探求し続けることで、皮膚科学および免疫学の発展に寄与していきます。

レーザーチーム

当チームでは、みらい光生病院アンチエイジングセンターとの密接な連携を図りながら、市立大学病院に設置された最先端のレーザー機器を最大限に活用しています。これにより、従来の治療法では得られなかった高い効果を実現し、患者の皮膚の健康と美しさを保つための革新的な治療を提供することを目指しています。

私たちは、最新のレーザー技術を駆使して、様々な皮膚疾患や美容的な悩みに対応できる多様な治療法を開発しています。例えば、皮膚の若返り、しみやしわの改善、さらにはニキビや瘢痕治療において、より効果的で安全なレーザー治療を提供するための研究を進めています。また、治療の効果を最大限に引き出すために、個々の患者に合わせた照射プロトコールの開発にも注力しており、これにより個別化医療の実現を目指しています。

さらに、私たちのチームは、レーザー治療が患者の生活の質を向上させるだけでなく、治療後の回復期間を短縮するための方法を模索しています。これにより、患者がより快適に、そして迅速に治療効果を実感できるような環境を整えています。今後も、みらい光生病院アンチエイジングセンターとの協力を深め、新たなレーザー治療技術の開発とその応用に取り組み、皮膚科領域における治療の可能性をさらに広げていくことを目指しています。

中村准教授グループ

  • 皮膚癌における腫瘍免疫動態の解明と新たなバイオマーカー、治療薬の開発
  • メルケル細胞癌における免疫療法の治療効果と免疫学的バイオマーカーについての他施設共同研究(主幹施設)
  • 環境因子と皮膚老化のメカニズム
  • 芳香族炭化水素受容体(Aryl hydrocarbon receptor)と皮膚疾患

皮膚癌に苦しむ患者さんに新たな治療法を

悪性黒色腫やメルケル細胞癌といった皮膚癌は、肺癌や大腸癌と比べると患者数がとても少なく、いわゆる希少癌と呼ばれるものです。ここ数年で、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の出現とともに治療の選択肢が増えつつありますが、それらの治療の効果のある患者さんは約半数であり、依然として新たな治療法、治療効果を予測する検査法(バイオマーカーといいます)が求められています。我々は全国から症例を集積し、皮膚癌における腫瘍免疫の解析、新たなバイオマーカー、治療法の開発を行っています。

研究には最先端の機器を使用します。次世代シーケンサーによる発現遺伝子の網羅的解析、オールインワン蛍光顕微鏡による2~3次元のイメージ解析、マルチプレックス免疫蛍光染色による空間的シングルセル解析など、先進的な皮膚癌研究に必要な実験機器が研究室にはあり、2名の実験助手さんによりいつでも使用可能な状態になっています。

人生100年時代に求められる皮膚老化研究

人生100年時代を迎え、医学的アプローチも、ただ寿命を延ばすことを目指すのではなく、いかに健康寿命(健康に過ごせる期間)を伸ばすことが出来るかに変化しました。皮膚老化に対する考え方も、アンチエイジング一辺倒から、年齢を重ねることを前向きにとらえ、老化による身体の変化とともに生きていく「ウィズエイジング」へと変わりつつあります。皮膚老化とポジティブに付き合っていくためには、そのメカニズムの解明が何よりも重要です。

皮膚老化の原因には、内因性と外因性の原因の2つがあります。内因性の原因とは生物学的な老化、遺伝的因子、ホルモンなどであり、予防することが難しいですが、外因性の原因は紫外線や喫煙、大気汚染、化学物質など、それを理解することで防ぐことが可能です。我々はこの外因性の原因、すなわち老化の環境因子について、その皮膚に与える影響を調べる研究を、ドイツ・IUF(ライプニッツ環境医学研究所)と協力し行っています。

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